まだ教育に関わる仕事をしていた頃、北欧の教育に関する情報に出会うことが時々ありました。
北欧に関する情報の中でも特に心を惹かれたのが、たのしい授業2015年5月号に載っていたレクサンド高校と小学校に関するレポート。自由、自主選択、民主主義、成人教育。日本の教育が抱える様々な問題や閉塞感の答えがそこに詰まっているように思えました。
さて、今回はそんなスウェーデンの教育の特徴や現状を少しだけ整理してみようと思います。そしてそこから日本の教育についても考えてみましょうか。
教員の世界から逃げ出した人間の戯言ですので、話半分に聞いていってください。
最近のスウェーデンの教育
現行のスウェーデン教育が目指すのは社会に関心をもち自分の意見をもって議論できる国民。ディスカッション授業が多く行われています。
スウェーデンの現行教育制度あれこれ
スウェーデンの教育は、
- 基礎学校9年(義務教育)
- 高校3年
- 大学3年
という流れで進んでいきます。
先に紹介したレクサンド高校のレポートを読む限りでは、高校の時点で相当に幅広いコース選択があり、興味や進路希望に応じて様々な職能を身に着けることができるようになっています。
長期休暇は以下の通り。
- 夏休み(6月上旬~8月中旬)
- 冬休み(3週間)
- 秋休み(1週間)
- イースター休み(4月上旬1週間)
- スポーツ休み(2月下旬1週間)
新学期は夏休み明けから。つまり日本で春休みにあたる部分が2か月半ほどあるということです。これ、教員もかなり助かっていると思いますよ。新年度に向けた準備を余裕をもって進められますから。日本なんて新年度の準備を数日で済ませますからね。
その他特徴的な部分を。
- 制服なし
- 授業時間外の情報機器利用は自由
- 1クラス平均24人
- 教師一人当たりの生徒数12.1人
- 高校入試がなく、倍率が高い場合は成績点(義務教育の最終成績)で選考
日本の教育とはだいぶ雰囲気が違いますね。
近年のスウェーデン教育の移り変わり
スウェーデンでは、1970年頃から教育に関する議論がなされるようになりました。
「子どもは一人ひとり違う。それぞれの生徒の学ぶプロセスと自主性を重視すべきだ」
そのような論調で教育改革が設計されていき、
1994年に学校教育の大改革が行われました。
カリキュラムに関して自治体と学校の裁量を広くとることで、現行のような民主的で双方向性のある授業が多く行われるようになりました。
スウェーデンの教育が抱える問題
学力低下問題
スウェーデンが現在抱える教育問題が「学力低下」です。
PISA型学力検査の結果、10年の間に学力がこのように落ちました。
- 読解力:9位から19位
- 数学的リテラシー:18位から27位
- 科学的リテラシー:10位から29位
スウェーデンでも対策をとってはいますが、現状は厳しいようです。
同じシステムをもつフィンランドは学力が高い
北欧の教育と言えばフィンランド。その高い教育成果は世界中から注目されています。
そのフィンランドですが、教育システムや思想はスウェーデンとよく似ています。
似た教育を行っていながら、なぜフィンランドは世界でも上位に入る結果を残し続けているのでしょうか。
スウェーデンとフィンランドの違い
違いの一つは教員の社会的ステータスと給与です。
スウェーデンの教員は給与もステータスも低く、教員に志願する学生が少ない状況です。
一方のフィンランドは教師の社会的ステータスが高く、優秀な学生が教師を目指しています。博士号をもって教師になる学生もいるそうです。
また、フィンランドの教育では教師の権限が大きいのですが、スウェーデンでは政治家が学校に介入し様々な要求をされるという側面も。
似た教育システムをもちながらも結果に差が生まれたのは、教員の待遇の違いが理由だったのです。
日本の教育に照らし合わせてみると
日本の教員のステータス、給与は?
日本の教員のステータスは現在進行形で下がっていっているという表現が当てはまります。度重なる教員叩き報道で完全に世論が形成されてしまいましたからね。
ついには「あなた教員なの?大変ねぇ」とお気の毒に思われるポジションにまで落ちてしまいました。
給与は比較的高い方だとは思いますが、時間外手当がつかないブラック契約です。その分を換算すると、コスパは悪いですね。
この話、要は学生が教員という職を選ぶかどうかという話なので、そういうブラックな条件は大きなマイナスポイントです。そういう意味で、給与の高い職とは言えません。
日本の教育の先に待ち構えるのは学力低下
さきほどのスウェーデンの教育問題と絡めましょう。
簡単に予想できますね。
日本の教育の先に待ち構えているのは学力低下です。
教育業界に近い位置に立っている方はもう肌で感じていると思いますが、
既に日本全国で「教員のなり手不足」が表面化しています。
崩壊は始まっているんですよ。
学力低下を現場の工夫で食い止めることはできない
学テの時期が近い!5年生はちゃんと勉強させているのか!現場の努力で!授業の改善で!放課後残して!他県に負けるわけにはいかない!
のん気なもんですよ。
学力低下は普通に政治レベルの問題です。
現場がどうこうとか今いる教員を鍛えるとかそういう話じゃないんです。
「教員のなり手が足りない!」
「もっと教員の仕事のやりがいを学生に伝えていかなければ!」
こんなこと言っちゃってますからね。ひどいもんです。
もう学力低下は食い止められないんじゃないでしょうか。
おわりに
後半で好き勝手話した日本の教育の行く末。実際どう思います?
日本の小学校教育の現場では学力低下を教員と家庭の責任にして、やれ研修だやれ家庭学習だ宿題だとあれこれ手を尽くしています。
スウェーデンとフィンランドの関係を見る限り、本当に手を加えるべきは教員の免許制度や大学教育の必要単位、教員の給与改善あたりだと思うんですよね。
何なら教員養成課程に医学部みたいな一年の現場実習義務付けて国家試験も設定すりゃいいんですよ。さらには6年制にして全員修士扱い。もちろん給料も上げる。自分はそれぐらいやった方が良いと思います。
暴論でしょうか。
以下参考サイト、記事
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