「子どもの成長は地下水なんだよ」
自分がまだ小学校教員をしていた頃、そうおっしゃっている先輩教員がいました。
常に子供の心を第一に考える、とても尊敬できる先生です。
このセリフ、一見「何のこっちゃ」と首をかしげたくなります。
しかし、この言葉には子どもを信じる姿勢、毎日子育てに苦労する家族に向けた深い理解と愛情が感じられて自分はとても好きでした。
今日は日々の指導に悩む先生方や保護者の方に向けて、「子供の成長と地下水」の話をします。
子育ては苦労のわりに結果が出ない
子どもに何かを教えても、いつもそれがすぐ伝わるわけではありません。
それこそ自分は今1歳の長女の子育てをしていますが、あれこれ教えてもなかなか身にならずに途方に暮れることがあります。
自分はよく長女に読み聞かせをします。
「デッデ!デッデ!!」
と謎の言語で「本を読め!」と頼み込んでくるんですね。
断ると物凄い騒ぎになるので何度でも読み聞かせを続けます。
長女はまだ字をわかっていません。
はっきりと喋ることもありません。
「そんな長女に本を読んで聞かせることに、はたして何の意味があるんだろう?」
「愛情のやりとり、本読みの習慣づけとしては良いのだろうけど、言語の獲得になにか役だってはいるのかな?」
何度も教えるけど、なかなか結果がついてこない。
教員の仕事も家庭の育児も同じです。共通してもっている悩みです。
教えたことは地下水となって子どもにたまる
その長女が、先日一人で絵本を読みました。
ページをめくっては、何かをしゃべっています。
『どてっ』
と書かれたページでは
「でっ」
『ぷうっ』
と書かれたページでは
「ぷっ!」
明らかに絵本の字と同じ事を言おうとしています。
もちろんまだ字は読めません。
これまでの何百回もの読み聞かせの中で、長女はそのページに書かれている言葉を耳で覚えていたんですね。
大人が子どもに与えた指導や刺激は、子どもの中にしっかりとインプットされます。
こちらが求めている反応をすぐに返してくれないこともありますが、それは表に出ていないだけで、子どもの中にはしっかりと記憶や体験としてしまわれています。
目には見えないけど確かにそこにある、地下水のように溜まっています。
地下水はある日突然湧き水になる
子どもの成長はある日突然訪れます。
毎日少しずつ溜めていた刺激や経験が、ある日突然表に出てくるのです。
その辺、農業に近いものがありますね。
マメを埋めたあと、すぐに芽は出ない。
成長を信じて毎日を水やりをしていると、ある日突然芽が出てくる。
もし芽が出ないからといって水やりをやめてしまうと?
育児や学校教育は短期的な結果ばかりを求めるものではありません。
なかなか結果が目に見えなくとも、いつか芽が出ると信じて指導や刺激を与え続けるんです。
毎日の育児や指導は無駄じゃない
- 何度教えても子どもが行動に移さない
- 物言わぬ赤ちゃんに話しかける意欲が続かない
大丈夫。
その苦労はムダではありません。
子どもが表現するところまでいっていないだけで、「教えた」という事実はしっかり子どもの中に積み重なっています。
あとはその積み重なった地下水がある日突然わき水となって表に出てくるのを待ちましょう。
子どもはある日突然成長します。
でもその突然は、毎日子どもと向き合い続けてきた家族や教員が少しずつ地下水を溜めたその結果なのです。
と、尊敬する先生が言ってました。
個人的にとても好きな考え方です。
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