ストラテラはADHDの行動を改善する薬です。
この薬は18歳未満の児童生徒の服用も許可されており、小学校に通う児童の中にもストラテラを服用している子がいます。
コンサータに比べ処方のハードルが低くリスクも少ないため、ADHDの行動改善のためにストラテラを処方される児童は今後も多く存在していくでしょう。
この記事では、児童がストラテラを服用している場合に担任教師がどのような点を観察していくことが望ましいかを説明します。
注)この文章は筆者が小学校教員の視点から経験と調査をもとに書いたものです。書かれている内容については参考までに留め、実際には保護者や医師との連携のもとに指導を進めてください。
ストラテラの副作用の有無と程度は最優先で見取る
児童がストラテラの服用を始めた場合、最も優先して観察しなければならないのは副作用です。
行動に関してはすぐには改善されませんので、まずは副作用を詳細に観察してください。
想定されるストラテラの副作用
ストラテラの副作用は人によって様々です。
以下、代表的な副作用を紹介します。
ストラテラの製薬会社イーライリリー株式会社HPからの引用です。
<肝機能障害>
からだがだるい、吐き気、嘔吐、食欲不振、かゆみ
<黄疸>
白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、尿が褐色になる
<肝不全>
吐き気、嘔吐、食欲不振、羽ばたくような手のふるえ
<アナフィラキシー>
からだがだるい、ふらつき、意識の低下、考えがまとまらない
ほてり、眼と口唇のまわりのはれ、しゃがれ声、息苦しい
息切れ、動悸、じんましん、判断力の低下
引用元:日本イーライリリー株式会社 患者向医薬品ガイド
https://www.lilly.co.jp/_Assets/pdf/patient/STR_CAP_KANJA_GUIDE.pdf
副作用が重く出ている場合
上の項で紹介した副作用がはっきりと出ている場合、取り急ぎ保護者へ報告をします。
保護者と医師で相談し、その結果服薬を中断したり減薬する場合があります。
副作用については弱いものであっても保護者に細かく情報提供し続けるようにしてください。
医師の判断に関わる貴重な情報です。
ストラテラ服用開始後2週間経過した頃から行動の変容を見取る
ストラテラは遅効性の薬です。
望ましい効果が現れ始めるのは人によって違いますが、2週間が経過した頃から不安定ながら効果が現れる場合が多いです。
行動の変化が現れ始めたら、副作用と平行して記録を取るようにしてください。
児童自身の感想
児童の感じ方の変化は一番の情報です。
「頭が静かになった」
「霧が晴れた」
「集中できるようになった」
等々、児童の表現の仕方は多種多様ですが、できるだけそのままの言葉で記録してください。
ストラテラの服用は児童の困り感の改善が目的です。
児童自身が手応えを感じていれば自己肯定感が育つきっかけになるほか、薬に対する児童の信頼にもつながります。
文字の書き方
ストラテラが効き始めると、児童の書く字が整う傾向があります。
もちろん字形は元来の性格や指導の状況によっても変わるものなので確実ではありませんが、薬効を確かめる指標の一つになります。
その他、生活の中で児童が抱えている様々な困り感に対する改善が見られるようであれば、それも記録していきます。
保護者との情報共有
行動の変化は主に社会生活を営む場である学校で見取ることができます。
なので、その見取りを保護者に伝えることは重要です。
副作用の見取りは常に情報提供する
上の項でも説明しましたが、保護者への副作用の報告は重要です。
医師の判断材料にもなりますので、小さな気づきであっても保護者へ丁寧に情報提供してください。
食事・睡眠に関する情報をもらう
逆に学校側から見えない家庭生活の情報をもらいます。
コンサータほど極端ではないものの吐き気に伴う食欲不振が見られるケースがあるほか、睡眠の状態にも影響が出ている場合があります。
食事睡眠の質は児童の体調を把握する基本的な情報なので、定期的に教えてもらってください。
まとめ「ストラテラの副作用と行動の記録を取り、保護者と情報共有する」
- 服用直後から副作用の程度を見る
- 服用2週間後辺りからは行動の変化が予想される
- 保護者との情報共有を綿密に行う
ストラテラはコンサータと比べ、副作用が少なく依存性もない薬です。
また、ADHDに対する行動改善の効果が実証されており、児童の悩みを軽減し学習に集中させることが可能です。
しかし、ストラテラにもコンサータにも人によって合う合わないがあります。
児童と薬の相性が悪く副作用が出る場合は服用中止も検討することになります。
児童がストラテラを服用している間は注意深く見取りと記録を続けるようにしてください。