教師がクラスの子ども達全員に対して話をする際にありがちな説教と、それに対する批判と代案を並べました。
「伝え方」に悩む人、怒鳴って子どもを動かす教師に違和感をもった人、人前に立って話すのが苦手な人、子どもに好かれたい人なんかに向けた記事です。
下を向いて手いじりをする子がいる
→ 先生は1分以上喋り続けていませんか?
「A君!ちゃんと話聞いているの?話を聞けない子は勉強できるようになれませんよ!」
この場合、A君は確かに先生の話を聞いていないでしょう。それは先生の話が長いからです。
理想は10秒。長くて1分。それを超える量の説明をしなければならない場合は、一度区切って復唱させる、黒板に字として残しながら説明する、同内容が書かれているプリントを配るなどの配慮が必要です。
たまーに5、6分熱心に口で説明する人がいますが、無意味ですね。
これを意識すると途端にその難しさに気づくのが体育の授業です。視覚で伝える手段が限られるので。
だから体育の授業を短い指示でスマートに混乱なく進めている教師を見つけたら徹底的に真似て下さい。
話の途中で動き始める子がいる
→ 一度の指示で多くのことを求めていませんか?
「はーいみんな手を洗ってそれからナプキンを出してそれから…って何でA君はもう手洗い場に行こうとしてるの?これだから話を最後まで聞かない子は…」
これは先生の指示の出し方に問題があります。A君は悪気があって動いたわけではなく先生の指示に従っただけです。
基本的に、一回の指示で伝える内容は一つにした方が聞いている側は助かりますよ。大人だってそうですよね?
先生が喋っている時にザワザワしている
→ 学級開きの時に話の聞き方を正しく「教え」ましたか?
「何で先生が喋っている時に私語が聞こえるのかなー?○年生なんだから静かに聞けるはずなんだけどなー?恥ずかしいね〜」
何年生になろうと、4月の出会いの時期には話の聞き方を速やかにルール化する必要があります。
『先生が話す時や誰かが手を挙げて当たった時は静かに聞く』
これはあくまで自分の場合のルールです。実際何でもいいので、これと決めたルールを全員に適切に伝え、その後は私語があるたびにこのルールをもとに手短に指導すれば、すぐに聞く姿勢は浸透します。
○年生なんだからできて当たり前だよ!というセリフは、絶対に踏んではいけない教員の地雷の一つ『教えずに怒る』をやってしまっているわけですね。学級崩壊への片道切符です。
経験の浅い先生が踏むことはよくありますが、ベテランの方でこれを堂々と踏んでいる人は少なくとも私には理解できません。
周りをキョロキョロ見回すor視線が合わない
→ 特性に合った環境調整、していますか?
「ほらC君また違うところ見てる!ちゃんとこっち見なさい!どうせ今話したこと聞いてなかったんでしょう!」
上で挙げた留意点の他に、特別支援の視点からも子どもを見る必要があります。
話が聞けないという課題には「座席」が影響している場合があります。
廊下側に座っている子の1人がどうも落ち着かないと思ったら、席替えの後は話が聞けるようになった。その子には雑音に影響を受けるという特性があり、廊下の雑音に気を取られていた、なんてことが結構あります。
話の聞かせ方を一通り意識したにも関わらず話をほとんど聞けない子がいる場合、そういった視点も可能性に入れてアプローチするといいですよ。
例)廊下の音、窓からの景色、前に人がいる、後ろから見られている気がする、ポスターが気になる、等々
原因は子供だけではない
今回紹介したものは、自分がかつて本を読んでは実践して経験則として蓄積してきたものです。
教育の技術の土台には必ず教育哲学があります。
今回の技術の土台になっているのは、「子どもが話を聞かないんじゃない。教師が話を聞かせられなかったんだ。」という考え方です。
本に書かれている技術にも、先輩教師が教えてくれる技術にも、必ずそれの根拠となっている教育哲学があります。
技術を学ぶ際にはできるだけその哲学にも触れて欲しいです。そうすれば色々と応用が利きますので。
偉い人に好かれる指導案の書き方や職員室で好かれる立ち回り方よりも、まず教員が学ぶべきはこういった教育技術や哲学一つ一つではないでしょうか?と常々思います。
怒られたくないから職員室では言いませんが。