「即レスは基本!!」
って言葉をツイッターでよく見かける。たしかに大切なことなんだろうけど、
小さな子を抱えながらそれってできるのかな?
っていつも気になってる。
子育てが始まってから、それまでの仕事の常識なんて半分以上吹っ飛んだよ。
— タビ (@Tabisen_writer) 2018年7月21日
- 結婚し子どもが生まれると仕事に当てられる時間が激減する
- 分掌、授業準備で手一杯になり成長に充てる時間が無くなる
- 時間があるうちに本を読んで実践を重ねるべき
- あ、でも結婚も子育ても良いもんです
これらを伝えたいと思って書いた文章です。
独身の若手教員向けに書きました。
小学校教員の指導力は独身時代のうちに身につけたい
教員が1年目から最優先で身に付けたいスキル
- 教員のスキルとは伝える技術。
- 何を伝えるかを計画したうえで、集団に対して確実に伝える力。
教員の専門性とは何かと聞かれれば、自分は上のように答えます。
この「伝える力」をもう少しカテゴリ分けすると、
- 集団統率力
- 確実に伝えるための教材教具準備力
- 授業中の微細技術
- 発達障害の理解
という感じでしょうか。この辺を身に付ければ授業も学級経営もひとまず成立します。
教育相談や発達臨床学、応急処置等々、伝える力意外にも学ぶべきものは山ほどあります。
が、「全ての教員が」「誰にも頼らず」「1人の力で」確実にこなせてほしいという意味で、この伝える力を最優先で身に付けるべきでしょう。
教員の指導力はインプット&アウトプットで向上する
指導力≒伝える力
と定義したうえで話を進めます。
子どもに適切に伝えられる先生は子どもからの信頼を獲得し、それがそのまま指導力に繋がりますので。
さて、教員の専門性である「伝える力」はインプット&アウトプットで成長していきます。
ここで重要になるのはインプット。自分の頭に新しい知識を入れる作業ですね。
教員の場合、アウトプットは授業という形で嫌でも行われるのですが、インプットの方は意識しなければゼロのままです。
- 明日の授業はこれを取り入れてみよう!
- 素敵な考え方を見つけた!子どもへの対応に生かしてみよう!
このように、インプットを根拠に明確なねらいをもったうえで「授業」「指導」といったアウトプットを行いましょう。
この繰り返しで教員の伝える力、指導力は成長します。
結婚後、子育て期は新しいインプットが難しくなる
結婚して子育てが始まると、そのインプットが難しくなります。
- 独身時代:退勤、帰宅後にのんびりと教育書を読み耽る
- 子育て期:退勤、帰宅後はそのまま子どもの世話
今までインプットに使っていた時間が無くなるわけです。
子どもを寝かせたあとや早朝など、どうにか時間を捻出することはできます。
それでも時間の絶対量は独身時代よりも大きく減りますね。これまでのように仕事と成長に没頭するという生活はできなくなるでしょう。
インプットが減ることは、そのまま成長が止まることを意味します。
子育て期に入ると、若い頃のような強烈な成長を続けることは不可能です。
若い頃に1人でPDCA回そう
独身時代に済ませておきたい伝える力の獲得。
その手段となるインプット&アウトプットをもう一段階かみくだいて説明します。
目指すのは「1人で」「毎日」PDCAを回すことです。
PDCAとは、
- plan(計画)
- do(実践)
- check(評価)
- action(改善)
のこと。最後のaction(改善)をもとに次のplan(計画)を立てることから、繰り返しという意味で「PDCAを回す」と言います。
教員が伝える力を身に付けるためのPDCAは以下の通り。
- plan:学んだ知識を元に次の授業で試すことを決める
- do:planの通りに授業や指導を実践する
- check:手応えを振り返る
- action:checkの結果必要を感じた本を読む
肝心なのはcheck。ここで何を手応えとするかが教員のセンスと言われる部分です。
自分の場合は、
- 子ども達の表情
- 「楽しかった」「えーもう時間なの?」という声
を手応えの根拠にしていました。
- 表情:伝え方が子どもにとって楽な形だったかどうかが汲み取れる
- 感想:子どもが活動に没頭できたかどうかは指示が確実に伝わっていたかを表す
そう考えていたからです。
これはあくまで一つの例。
checkの根拠を何にするかは、自分が目指す教員像から逆算すると良いでしょう。
独身時代、夜の時間を自由に使えるうちに、自分にとって必要な本をたくさん読んでインプットしてください。
それだけで次の日の授業が自分にとって意味のある経験の蓄積になります。
育児中の小学校教員は「過去の仕事の経験を生かす」
インプットができないまま授業に臨むという立場
上の項でも説明したとおり、育児中の教員はインプット量が減ります。
それだけではなく、授業に必要な教材教具を準備する時間の確保すら難しくなります。
年齢を重ねたことで割り振られる校務分掌の量も増え、いよいよ1分1秒に追われる生活になります。
15時30分に学級の子ども達を帰し、分掌業務や事務仕事を済ませて16時30分には学校を出る。
それが育児中の教員の見ている世界です。
独身時代のPDCAが引き出しとなって助けてくれる
1コマの授業準備に5分も充てられない。
そんな極限状態で働く育児中教員を助けてくれるのが、独身時代に蓄積した経験です。
- こういう子に対してはあの方法が効果的だった
- この内容を授業する時はあの方法が使えたはず
その都度その都度自分の脳ミソから経験を引っ張り出して、それを流用したり改良したりすることでどうにか短時間での授業準備をこなすわけですね。
それでも苦労は絶えません。
あれこれと工夫を重ね、自分にできることとできないことに正直に折り合いをつけ、どうにか自分の職責を全うしていくのが育児中教員。限りなく弱い立場です。
教職員組合が職員室で戦う理由
時には子供じみた論調を使ってまで管理職や教育委員会とバトルする教職員組合。
自分は若い頃、組合のバトルを「うわ〜」という目で眺めていました。当然非組でした。
しかし、組合がそういう行動を取るのには理由があったんですね。
組合は基本的に仕事を減らす方向で意見を述べます。
時には極端な意見を出すこともありますが、基本的には時間の足りない育児中教員のような弱い立場の教員を守るための行動です。
当時の自分は時間が有り余っていたのでその姿に同調することはできませんでした。
育児中教員を経験した今となっては、組合が存在する理由がよくわかります。
小学校教員にとって育児は上質なインプット
教員は0歳〜6歳というブラックボックスを知る必要がある
育児は教員に一つ大きなインプットをもたらしてくれます。
それが「0歳〜6歳までの子どもの人生を知ることができる」というもの。
小学校に入学する6歳になるまで、その子がどのような人生を歩んできたのか。そして保護者がどれほど我が子を愛し悩み泣き笑い苦労を重ねてきたのか。
教員は我が子を育てることで、その事実を初めて強烈に知ることができます。
親の苦労を知る教員は優しい
育児を経験した教員は個人懇談や家庭訪問といった場で保護者の苦労に共感することができます。
学級で自分の目の前に座っている大勢の子ども達。その子達は一人ひとりがそれぞれ2000日を超えるドラマを経て小学校に入って来た存在であること、1人1人がかけがえのない存在であることを心から理解できます。
6歳児。
2000日以上の間、愛情を注ぎ、泣き、笑いながら育てた我が子。その子が完全な人災で失われてしまったんだ。
何日経っても親御さんを想像すると心が痛む。
学力よりも学校の評判よりも、まずは子供という存在を人間として捉え直そうよ。
— タビ (@Tabisen_writer) 2018年7月19日
育児を経験した教員は優しさを備えているのです。
優しさの形は人それぞれ。それを厳しさという形で表す教員もいれば穏やかさとして表す教員もいるでしょう。
ですが、根底にあるものは皆同じ。
育児を経験することで、教員は目の前の子ども達を「かけがえのない存在」として認識できるようになります。
教員が陥りがちな上から目線を育児が取り払ってくれる
職業柄、教員は分析屋になりがちです。
多くの子どもや保護者を見続けていることから、無意識にそれらを比較してしまい、どうしてもアラも見えてきます。
特に仕事を始めて数年経った辺りの教員はその傾向が強くなりがちで、人によってはその思考を隠しきれずに保護者に見せてしまい信用を損なってしまうケースもあります。
育児は教員からその分析屋の側面を消し去ってくれます。
- 育児がいかに気苦労の絶えないものであるか。
- 育児がいかに計画通りに進まない、偶然の繰り返しによるものか。
この事実を体験を伴って理解することで、教員は保護者に対し尊敬の気持ちをもって関わることができます。
何年も何年もその子を育て続け、これからも生涯その子と関わっていくのは保護者です。
対して担任がその子と関わるのはせいぜい1〜2年。
「担任である自分こそがこの子を絶対に幸せにしてあげる!」
これは教員のエゴに過ぎません。
「この子とご家族の長い人生の中の一瞬をお手伝いさせていただく」
これが教員の仕事です。
おわりに
限度はありますが、若いころに知識技術を身につけようと渇望することは大切なことだと思います。
実は教員が(おそらく他の職種も)思う存分に修業をできる期間は思いのほか短いんです。
いまのうちにPDCAをガッツリ回し、次のライフステージに立った未来の自分が使えるような引き出しをたくさん身に付けてください。

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