2018.5.15日本経済新聞記事より。
自民党の教育再生実行本部が「変形労働時間制」の導入を盛り込んだ中間提言をまとめました。
概要は以下の通り。
- 教員に対する変形労働時間制の導入が提言された
- 労働基準法では勤務時間を1日8時間週40時間と定めている
- 同法では1日ではなく1ヶ月、1年の平均で労働時間を見出す変形労働時間制も認められている
- 夏休み等に教員が長期休暇をとるなどの方法で労働時間を削減するねらい
- 同時に夏休み中の研修や部活動のあり方も見直すべき
以下、気になったことを書き並べていきます。
変形労働時間制は教員の多忙感を解消するものではない
変形労働時間制が採用されると超過勤務時間は減ります。
しかし教員の多忙感は変わりません。
変形労働時間制採用後の働き方はこうなる
具体化します。
例として、
- 学期中の勤務時間の割り振りを2時間増
- 長期休業中の勤務時間の割り振りを4時間減
と変形労働時間制に基づいた割り振りを設定します。
17時頃まで働いていた教員は19時まで働くことが「義務づけられます」。
そうして毎日2時間多めに働いた分、長期休業中は通常よりも短い午前勤務か何かになります。
教員の仕事量、学期中の多忙感は全く変わっていませんね。
むしろ、これまで育児等を理由に定時帰宅&持ち帰り仕事をしていた教員達は保育園に延長をかける等の負担が新しくかかってくることでしょう。
年休はいつ使うのか?
これまでも長期休暇はそれなりに休んでいるんです。
ここでしか使えない年休を行使して。
つまり長期休業中の勤務時間を割り振り変更されようがされまいが、教員の休み方は変わらないんですよ。ありがたくないんです。
むしろ年休が余るだけですよ。
学期中は今まで通りカツカツで働いて、夏休みになったら勤務時間の割り振りを8時間より下に減らす。
そうすることで一年間の平均超過勤務時間を下げるというわけですよね。
それって休憩時間もなく超過勤務している現在の教員の1日の働き方を肯定したことになるのではないでしょうか?
教員の超過勤務を解消すべき理由が全く解決されない
教員の超過勤務を解消したい理由
そもそもなぜ教員の超過勤務を避けなければならないのか。
一つはもちろん労働者の権利を守ること。
そしてもう一つが教育の質の低下を防ぐこと。
変形労働時間制の導入によって教育の質の低下は果たして防げるのでしょうか?
日々忙しさに追われる働き方は何も変わりません。
充実した授業準備や教材研究ができないという状況も変わらないということです。
変形労働時間制は只の数字いじりに過ぎない
17時定時の教員が19時まで働く
→2時間の超過勤務
ならば19時定時にしよう
→超過勤務0分
変形労働時間制を採用した結果、教員の超過勤務が減りました!
結局数字いじりなんですよね。
たしかに結果だけ見れば成功ですよ?
「変形労働時間制によって教員の一年間の超過勤務時間が〇〇時間減りました!」
でも変わったのは数字だけ。
超過勤務時間を下げるのは教員を多忙から開放するためですよね?
数字は改善しても、本質は全く捉えられていません。
変形労働時間制で無理やり数字を下げたところで教育の質は上がらないんですよ。
まぁ、数字さえ下がればそれで満足する人もいるのかもしれませんが。
「1日」という括りから視点を離してはいけない
臭いものにフタをしてはいけません。
解決すべきは「1日」の中の仕事の量と質の改善なんです。
- いかに休憩時間を確保するか
- いかに定時退勤を可能にするか
- いかに8時間の労働時間の中に授業準備時間を盛り込むか
この視点から離れてはいけないんです。
方法は色々あると思います。行事の精選であったり、調査物の削減であったり、専科教員の配置による担任の休憩時間確保であったり。色々やれますよ。
関連ページ:教員の労働環境は結局どうすれば改善されるのか
ただね、何度も言いますが「1日」という視点から離れてはいけない。
今回の変形労働時間制ですが、不勉強な自分の目には只の数字いじりにしか見えませんでした。
定時の中で休憩時間と授業準備時間を得ること。
まずはここから逆算して考えませんか?
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